Mashiro Chronicle

長文をまとめる練習中 割となんでも書く雑食派

伝統と現代の融和点:『金色ラブリッチェ』感想(ネタバレなし)

短評

 

『金色ラブリッチェ』は美少女ゲームの伝統的文法の中に現代的な掛け合いを溶け込ませたバランス感覚のよい作品だ。プレイヤーの視線誘導や伏線回収が巧みで、キャラも十分立っている。CG一枚、シーン一つ取ってみても隙がなく、万人におすすめできる。

 

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遅くなったが、SAGA PLANETSによるヴィジュアルノベル、『金色ラブリッチェ』のシナリオを完走した。

 

ひとことで言えば、大満足の出来栄えだ。

 

満足した理由は、「過不足ない」という表現に集約できると思う。

 

シナリオも、CGも、キャラ属性も、すべてまとまっている。極めて高いレベルでバランスが取れた作品だ。

 

まず、攻略可能ヒロインの幅の広さ。

 

「金色」というコンセプトからして、見た目が没個性にならないか心配してしまったが、結局杞憂に終わった。

 

おてんばプリンセスたるシルヴィ、生真面目な女騎士のエル、以下ギャル属性、不良などなど個性がしっかりと強調されている。そして、その個性がきっちりとかわいさへと繋がっている点も見逃せない。

 

サブヒロインの扱いがメインに比べて少し雑に感じたが、これだけキャラの濃いメンバーを揃えてしまったことを考えると、正統派美少女は箸休めにもなる。そう思うと、素直なストーリーになったのも頷ける。

 

攻略不能な女キャラも、物語の要所要所できっちり存在感を放っている。

 

時には3Pとしてシーンに乱入してくるから侮れない。そして、そのすべてがたまらなく男の本能を刺激してくる。

 

3Pに限らず、R-18シーンも各種プレイを満遍なく散りばめていて、多様性の観点からも評価できる出来栄えだ。

 

シナリオの性質上、グランドエンディングルートのシーンはやや実用性に欠けるが、そんな時私たちは思い出すのである。「S◯Xはコミュニケーションである」、と。

 

本当にバランスのいい作品だが、おそらく最も評価されるのはシナリオだろう。

 

テクスト的には、ややリズムが狂う瞬間もあった。また、「思ったが」を転換に使いすぎた弊害もあったように思う。

 

が、しかし、そんな短所は練りこまれた設定とシナリオが吹き飛ばしてくれる。

 

とりわけ、グランドエンディングルート最後に分かる真実は、この『金色ラブリッチェ』の世界を丁寧に包み込んで、作品の背後にある「『めでたしめでたし』の童話的」=民話的モチーフを崩さないまま私たちのもとへ感動を届けてくれる。

 

また、主人公の疑問やヒロインたちの示唆深げな発言が挿入されるタイミングも素晴らしく、会話のテンポを損なわないまま、結末での私たちの驚きを担保してくれている。

 

技巧的にも十分優れた作品だが、内容も感慨深い。

 

「めでたしめでたし」とは言うものの、グランドエンディングの行き着く先は、人によっては「めでたし」からほど遠いものであると感じるかもしれない。

 

しかし、私たちは思い出さなければならない。あの湖はなんのシンボルだったかを。輝ける時間ではない。あの湖は、過去、現在、未来を貫通しアナクロニズム的な世界への扉を開く、「永遠」の象徴だったのではなかったか。

 

そう考えた時、私の胸にある思いが去来する。主人公とお姫様は、何かを永遠にするために、数年後間違いなく約束を果たすだろう、と。そして、そのまま「永遠」を本当に掴んで、真のハッピーエンドへと突き進んでくれるだろう、と。

 

その確信を与えてくれる物語を作り上げることができた、その事実自体が『金色ラブリッチェ』の成功なのだ。実際にCGでどうのこうの、というのはその確信を追認したにすぎない。

 

ピースの埋まっていない状態では「めでたし」と納得しがたいような悲劇要素含みの展開や、伏線を余すことなく回収しようとする姿勢は、昨今見られなくなりつつあるものの、美少女ゲーム、ヴィジュアルノベルの伝統ともいえる。

 

その意味では、『金色ラブリッチェ』は間違いなく正統派の作品だ。

 

しかし、一方で、劇中劇、あるいは会話劇に近いテンポで軽く進める技術や、泣かせるにとどまらない、底抜けのハッピーエンドへの指向、またハッピーエンドの示唆は、極めて同時代的だ。

 

『金色ラブリッチェ』が辿り着いた「中庸」とは、まさにこの一点に収斂するのかもしれない。

 

どこか懐かしくて、ずしりと心に響いて、でも前を向き続けられる明るさがある。

 

『金色ラブリッチェ』が放つその明るさが、私たちの「ゴールデンタイム」を提供してくれているに違いない。断言するが、秀作だ。ぜひプレイして欲しい。