Mashiro Chronicle

長文をまとめる練習中 割となんでも書く雑食派

糖分過多のゆずらしい一本に 【『RIDDLE JOKER』プレイ感想<ネタバレなし>】

短評

 ゆずソフトの記念すべき10本目の作品は、見ているこちらが悶えるような女の子のかわいらしさを前面に打ち出した、いい意味でゆずソフトらしい一本になった。かわいい女の子と濃密な時間を過ごす、という美少女ノベルゲームのエッセンスをくり抜いた本作は、その女の子の属性や種類も丁寧に揃えており、よい意味で「デパート」と表現して差し支えない。高品質の立ち絵やCGを鑑賞しながら、どっぷりと沼に嵌りたいすべてのエロゲユーザーにお勧めできる。


 全人類待望のゆずソフト最新作、『RIDDLE JOKER』が発売されてはや一週間が経った。今作はゆずソフトの10本目の作品だが、まさにゆずソフトの足跡を振り返るにふさわしいタイトルに仕上がったのではないだろうか。

 まず、なんといっても絵が目を惹く。ひと目でゆずソフトだと分かる、キャッチ―で流行にも敏感、他方でなかなか真似できない絵柄は健在だ。実店舗でもオンラインショップでもまず間違いなく気が付くデザインに仕上がった。

 キャラクターデザインという観点でいえば、メインヒロインの中でも最も当初からプッシュされていたあやせの予約特典色紙(あるいはキャラソンパッケージ)での姿はなかなかどうしてミステリアスな雰囲気を保たせることに成功している。それはあやせの目線の向きであり身体のくねらせ方であり、あるいは手のポーズに原因があるのだが、とにかくそうしたイメージを我々に上手く刷り込んだ。これは肝要なことで、だからこそあやせの本性というギャップが効いてくるのだ。

 いや、本当のことを言えば、そのミステリアスな雰囲気というのはあやせの魅力、ひいてはこの『RIDDLE JOKER』という作品そのものの本質をついているのかもしれない。作品中、極端にあやせの二面性が強調される。プレイヤーはどちらが本当のあやせなのか重々承知してはいるものの、他方であやせという存在がどうしてそこまで人前での演技にこだわるのか、その一点に引っかかりを覚えながら、彼女の素直になれない心と向き合っていくことになる。ふと漏れるあやせの本音、ルートの最後に待ち受ける幾つかの真実、そうした全てが私たちの心を鷲づかみにしていくのは、一見(裏表問わず)明るく接しやすいあやせですら放つ妖しい雰囲気の仕業である。女は秘密を一つ纏った方がよい、とは言ったものだ。

 その他のヒロインも個性や能力が際立っていて面白い。節々からお兄ちゃん大好きオーラが溢れている義妹七海、記憶の片隅にしかいなかったはずの年上幼馴染みたる茉優……こうしたキャラには、ゆずソフトファンなら見覚えがあるかもしれない。もちろん、ストーリーやキャラデザ、シチュエーションで差別化はしているが、ふとにやけてしまう一瞬があることも否めないだろう。

 物語としては、込み入った話を上手に避けながら、一方ではスパイものとしてのスリルを残す絶妙な塩梅を保っている。スパイものは頻繁に話が難しくなりすぎるきらいがあるが、『RIDDLE JOKER』は複雑さをできるだけ取り除く一方で、きっちりと醍醐味であるハラハラドキドキを私たちに提供してくれる。

 立ち入った話を避けたからだろうか、たとえば主人公の出自であるとか、背後に潜む巨大な組織の実情であるとか、そうしたところにはあと一歩踏み込まなかった印象だ。ただ、これはおそらく意図的なものである。そもそも、近年のゆずソフトはそうした物語を大きく広げていくような要素に対し一歩距離を置いた作品を発表し続けてきたではないか。

 そう、ゆずソフトは、最初からそんなものを追い求めてはいない。あくまでも、美少女ゲームとして、女の子をかわいく描くこと、かわいい女の子とコミュニケーションを取ること、そこだけを突き詰めてきたブランドだ。その意味で、『RIDDLE JOKER』はゆずソフトらしい作品になった。どのヒロインにもきっちりとほれ込んでいける、という意味で、安心感のある一本だ。

 最後に、やや下世話な話になるが、ゆずソフトといえばオナニーである、という評判がいつからかついて回るようになった。今作も十分に期待してくれて構わない――衝撃度合いでいえばこれまでの作品に軍配が上がるかもしれないが、その数やヴァリエーションには目を瞠るものがある。人間、誰でも性欲には勝てないのだ。

 閑話休題。本作はゆずソフトらしい丁寧な作り込みが随所に見られた作品だ。音楽ひとつとっても粗がなく、私たちは『RIDDLE JOKER』という作品そのものに無理なく入り込んでいける。そして、いつしか帰ってくるのが億劫になるのだ――ヒロインたちとの時間に酔ってしまうあまり。