Mashiro Chronicle

長文をまとめる練習中 割となんでも書く雑食派

今さら『夜明け前より瑠璃色な』をプレイする

もう10年以上前の作品で、硬軟問わず感想は溢れかえっていると思うので、ここはゆる~い感じで。

 


 

ワケあって00年代中盤から後半にかけてのエロゲにはそれなりに通じているんだが、ところどころ、タイトルだけ知っている作品もある。中には超有名タイトルなのに縁遠かったものもあって、『夜明け前より瑠璃色な』(『けよりな』)はその一本だった。

 

かねてからプレイする意思はあったのだが、先日『ましまろ』の遅配にブチギレして某社の遊び放題に加入した時にその名前を見かけたので、一念発起、ひととおりやってみることにした。

 

作品の概要

 

説明不要の超有名タイトルだけれど、念のため。

 

2005年に発売された『けよりな』は、『月は東に日は西に ~Operation Sanctuary~』で注目を集めたエロゲブランド・オーガストがその次に送り込んだ大型タイトルだ。高品質の立ち絵と繊細な作り込みでキャラ萌えとシナリオの完成度を両立させた一本で、その後のオーガストブランドの参照点であるとも言えるだろう。

 

月へ向かう入植者が現れて数百年、月と地球との戦争などを経て、線の細い交流だけが両者の間に残された世界。数少ない月との交流拠点・満弦ヶ崎に住む主人公・朝霧達哉はある日、世話役のさやかから、唐突にホームステイ予定の訪問者が家に来ることを告げられる。数日後、達哉の前に現れたのは、気品溢れる装いの月の姫・フィーナとその侍女ミアだった。(※ブログ筆者による勝手な要約)

 

……というのが冒頭のあらすじ。まあ調べれば出てくるのだが、一応。

 

おことわり

 

本当はPS2版やそのPC逆移植版、それからFDの『Moonlight Cradle』もプレイすべきなのだが、とりあえず目途がついたので、ここではオリジナル版についてだけ。

 


 

タイトル前の映像

 

あ、タイトルを表示させる前に映像があるんだ~、といった感じ。特にその時は何も感じなかった。プレイし終わった後に見ると曲が心にす~っとしみ込んできて、遥か38万キロ先の世界に想いを馳せてしまった。

 

 

エピローグ

 

出だしはどうするのかなあ、と思いながら画面を切り替えると、いきなり宇宙船の中から始まってちょっとびっくりした。まあでもあり得る書き出しかな、と頭を切り替え、とりあえずクリックを続ける。伏線らしい言葉も特に見つけられず、設定を叩きこむことに専念。

 

 

OP

 

正直に話すと、タイトル前の映像がOPだと思っていたので、ここでOPをお出しされて若干戸惑った。榊原ゆいのクレジットにビビる。とはいえこの頃がむしろ全盛期か? 今でも続けられていることの方がむしろ衝撃かもしれない。

 

 

共通ルート

 

前情報をシャットアウトした状態で進めていたので、最初はフィーナルートしか解放されていないことを知らなかった。とはいえ、最初はフィーナをプレイするつもりだったので、なんでもないことだったといえばなんでもなかったのだが。あらかじめその情報に触れていれば、選択肢ひとつひとつにウンウン唸る必要もなかったんだけれども。それもまたエロゲの醍醐味。

 

なんにせよ共通ルートと個別ルートの比率すら分からないので、どのタイミングで個別に突入するのか、その距離感を測りながら話を進めていく。この時点で、「主人公の父親」、「フィーナの母親」、「謎の少女リース」あたりが物語の鍵なのかなあと目星をつけていた。実際そのとおりだったのだが、特に誇れることでもない。というのも、あまりにも分かりやすいので、プレイしていれば誰でも気づいてしまうのだ。

 

 

フィーナルート前半

 

エロゲをある程度プレイしていれば、個別に入ったな、という感覚は掴めてくるもの。割と確信を持って入り口と思われるポイントでセーブすると、てくてくシナリオを進めていく。

 

フィーナの責任感が強い性格と主人公の出自からだいたい話の筋は見えていたので、特にぎょっとすることもなくすんなりと話を呑み込んでいくことができた。とはいえ、シーンのひとつひとつからフィーナのかわいさがにじみ出ていて、個別序盤あたりでもうメロメロになっていた。エピソードをきっちり作っていくこと、その小さなエピソード群をシナリオとしてまとめていくこと、そういった辺りに巧みさを感じつつ、告白シークエンスへ。

 

特徴的なモニュメントの下で、主人公がフィーナにアプローチ。ああ、この主人公はもう止まらないし、私が彼でも止まらないだろうな、と思いながらぐいぐいフィーナに迫る。が、告白シーンを過ぎてから、話の中で一度たりとも立ち止まらなかったのはフィーナだった。この立ち止まらないというアイディアがフィーナの側にいつもつきまとっているのだと気づいたのはもう少し後のこと。ワガママだとか、前を向くだとか、あとは戦い続けるだとか、そういった表現はすべてフィーナの同じ部分を指している。要は、フィーナの造形やフィーナのセールスポイントとしてそういった性格を押し出しているということだ。

 

シナリオ的なヤマ場というか、話の運び方で感心したのはその後の初デート。一瞬、この主人公は相手の立場を頭では理解していながら実際には分かっていなかったダメ男だな、という思考がよぎったものの、すぐに思い直した。よく考えれば、主人公はこれが初めての経験。しかもまだ大学にも入っていない。自分の心を制御する以前に、そもそも自分の感情すら把握できなくて当然だ。このシーンは、2人が本当の意味で通じ合った感動的な瞬間を描いてはいるが、同時に主人公の幼さと成長も映し取っている。もちろん、フィーナのそんな姿も。

 

それにしても、汚れたサンドイッチを食べた瞬間は胸が詰まった。ボロボロ泣きはしなかったが、プレイヤーとしての私が一番感情を移入し主人公と一体化したのはこの河原での談笑シーンだったように思う。よく、感動しているから涙を流すのだ、と思っている人がいる。まあだいたい合っているし特に糾弾すべき考えでもないのだが、実際のところ、泣くかどうかとシナリオの完成度の間に強い関係はない。泣かせるには泣かせの技術が必要で、泣いたかどうかはその技術の巧拙を見極める指標にしかならないのだ。逆に、たとえ泣かなかったとしても、その物語が描きたかったものがしっかりとプレイヤーや鑑賞者の心に届くこともある。その意味で、主人公とフィーナの1回目の仲違いは、泣かせる技術こそ詰め込んでいないものの、「雨降って地固まる」を完璧に描写し尽くしたという点で、この『けよりな』の中で最も心に残ったエピソードになった。

 

そのシーンが終わると、後は婚約が通るかどうか、という話しか残っていないのは明白だった。カレンが剣術の試合を2人に課した段階で、「主人公がフィーナに負けるが、カレンは2人の婚約を認める」という話を本線として想定していた。それ以外にも、「ここで父親の伏線を回収し、月の重役として突如地球に戻ってくる」、「月の王国と主人公の繋がりが明らかになり、身分の点で主人公が逆転ホームランをぶちかます」、「さやかが暗躍する」、くらいは考えたが、基本的には一番上の筋で読み込みを進めた。というのも、この辺りで次第にフィーナとフィーナルートのテーマについて勘付き始めていたからだ。曲がったことをよしとしないフィーナの性格を一番綺麗に描くためには、まず主人公の側の心が折れてはいけないのである。そうでなければ、「フィーナに感化されて変わり始めた主人公」を通してフィーナの魅力を伝えきれない。そこに気付いたので、「フィーナの心が折れて本番の時に崩れ落ちる」くらいは考えたものの、「奇跡が起きて主人公がフィーナに勝利する」という可能性は一切考慮しなかった。奇跡という言葉は、この2人から最も縁遠い。なぜなら、主人公とフィーナにとって「結果」とは常に2人が戦い続けた末に掴み取ったものだからだ。そこに、奇跡が混入する隙は一切ない。

 

結局、本線で考えていた話でまとまり、主人公は晴れてフィーナの婚約者になった。が、私がひっくり返ったのは、なんとHシーンが1個しかないままエンディングを迎えてしまったことだった。スタッフロールが流れ始めた瞬間、この『けよりな』という作品は、主人公とフィーナの物語は、まだ遥か先にあるのだと思い知ったのだった。

 

 

麻衣ルート

 

フィーナルート前半終了時にリースルートが解放されなかったことを確認して、リースルートがtrueか、もしかするとグランドエンディングルートがあるだろうな、ということは 勘付いた。とはいえ、選べないものは選べないので、とりあえず解放された4人の話を進めることに。

 

こういうゲームの作りをされると、はたしてどういう順番でクリアしたものか、散々悩んでしまう自分がいる。とりあえず共通ルートや設定面で気に入ったキャラを先にするか、それともデザートとして取っておくか。この辺りは完全に気分の問題だ。幸いなことに、共通の段階で麻衣と菜月の2人にぐっと引き寄せられていたので、どちらかを最初に、もう一方を最後に置くことでモチベーションを保つという戦略を取れた。

 

そういうわけで真っ先に飛びついたのは妹の麻衣。妹属性は大好物なので。

 

まず声優にぐっとくる。最近では年上キャラもやるようになった(と言われる)安玖深音の妹キャラ全盛期だ。直前まで『ましろ色シンフォニー』をプレイしていたので、もう少しダウナーっぽい声を出すのだという先入観もあったが、実際麻衣の声質はそれなりに明るい。演技の幅の広さを見せつけられた形になった。

 

話の型としては、麻衣が義妹であることが明かされてから少しずつ2人の関係性の変化を描いていく、オーソドックスな妹ものだった。妹ものといえば(今から見れば)だいたい話のタイプは数種類に分けられるのだが、当時はこれが正統だったのかと言われれば、少し悩むところではある。Getchuの美少女ゲーム大賞の選評を読んでみると、当時から王道の妹ものとして認識されていたようなのだが、実際現代の私たちが想定するほどに様式美が洗練されていたかは不明。

 

ただひとつ言えることは、2018年の今になっても、麻衣ルートは義妹ものの快作として十分に楽しめる、という事実だけだ。

 

話の中身は、そういうわけで「義妹もの」と言ってしまえば終わってしまう。大抵、義理の兄妹どうしの恋愛をどのように正当化できるのか、2人が悩みながら、そのうち周囲にも影響を与え、最終的には吹っ切れるという筋をなぞる。この話では、後見人(だと彼女のルートで判明する)のさやかの態度が最も問題になるポイントだった。さやかほど家族にこだわった人は作中にいない(麻衣ルートの段階でさやかに最もダメージが回っていたことから、なんとなくさやかルートは家族の形がテーマとして描かれるんだろうなあと予想がついてしまうほどに)。この辺りのキャラの役割分担が上手だ。義理の妹を題材にすると、どうしても兄と妹の関係性にフォーカスし切ってしまいがちだ。家族を描くのであれば、他の要素を混ぜ込む必要がある。それがさやかなのだが、実はさやかの存在は麻衣ルートにもいい影響を及ぼしている。全員血の繋がりがないが故に逆に家族であり続ける努力をしてきた朝霧の家だからこそ、かえって2人の関係がもたらす衝撃の大きさが増幅していく。血縁に甘えることができない家族の結束と脆さをスパイスとして調理することに成功したのではなかろうか。

 

締めくくりもなかなかにカタルシス溢れる演出だった。抜けるような青い夏の空の下、2羽の白い鳥が、風に舞う麻衣のリボンと重ね合わせられながら飛んで行く。血縁の嘘を隠し、兄と妹として生きていくという誓いを込めた麻衣のリボンは、白日の下に身をさらけ出しながら2人のもとを去った。新しい2人の始まりと、これから彼らの前に現れる無限の可能性を示唆した、爽やかな終わりだ。このようなエンディングなくして義妹ものは完結しない。お手本のような物語の結末だった。

 

 

ミアルート

 

見え透いている話をどう魅せるか、というのはなかなかに難しい問題だ。ミアの場合、フィーナルートで「主人公が月に帰るはずの女の子とくっつき、そのまま月に行ってしまう」という話の筋を消化してしまっているので、どうやっても「主人公が月に帰るはずの女の子とくっつ」いた上で、「その女の子が地球に残る」というシナリオにせざるを得ない。同じ主題を繰り返し演奏するのは、工夫がない限りエロゲ的に面白くないからだ。

 

そんな苦労が垣間見える中で、ミアルートは小道具、いや、小鳥の使い方が巧みだったように思う。やがては巣立ち、自分の所帯を持つようになる小鳥が、自分の過ごした故郷へと戻ってくる。そのイメージを、丁寧にミアとフィーナ双方に重ね合わせている。果たして巣立ったのはミアだったのかフィーナだったのか、その結末からは窺い知ることができないし、断定する必要もない。

 

フィーナがミアを置いていく決心を固めるシーンも印象に残っている。クララの意思を果たしたミアの姿を見て、フィーナは確かに己の至らない部分に目を向ける。面白いのは、ミアが仕事を辞めることになる遠因がミアの完璧な仕事ぶりだった、というこの奇妙なねじれの方だ。そこに、フィーナの強い決意がにじみ出ているように思う。

 

ミアルートは割とあっさり終わらせた感じになってしまった。とはいえ未だ見ぬリースルートに向けて止まることはできなかったので、とにかく進み続ける。

 

 

さやかルート

 

上述のとおりさやかルートでは家族が問題になるんだろうなあと思いながらのプレイになったので、話もするすると呑み込んでいく。

 

このルートには、さやかが主人公や麻衣の頭をよしよしする描写が詰め込まれている。昨今流行りのバブみを見出すこともできるのかもしれないが、これは誤解いや曲解であるように思う。というのも、このルートで描かれているのは、血に頼らない家族の共生関係で、むしろ主人公と麻衣がどのようにさやかを支えるか、という方だからだ。さやかがひたすらに2人を甘やかす描写は、主人公と麻衣の、終盤における成長を印象付けるためのコントラストですらある。バブみというのは、さやかのその甘やかす態度を極端に強調する時に生まれてくるワードである。さらに言えば、バブみは、家事を全般的にこなしなんだかんだ主人公の身辺について気を揉む麻衣の方に寄せるべきアイディアであるように思う。

 

そういうわけなので、さやかが不摂生な側面も見せたりすることについてはあまり違和感がない。大人の弱さというものを見せれば見せるほどさやかが魅力的になっていくのは、あるいは主人公の背伸びした態度にも関係があるのかもしれない。

 

関係ないけど黒ストは興奮するよね。

 

 

菜月ルート

 

このベルトどうなってんだろと思いながらも視線が胸へと吸い込まれていくのが菜月ルート。一応私服は2パターンあるけど。

 

遠距離恋愛の難しさはさやかルートでもちょろりと触れられているが、同年代でかつ幼馴染みの菜月の方がより別離を強調できるのは言うまでもない。というかそれ以上に、同年代であるからこそのストレートな恋愛が醍醐味。さやかはどうしても年上女性の魅力を押し出していかざるを得ない、すなわち、意見の対立を吸収してしまうような大人の世界を描かなければならない。対して、菜月と主人公の間柄であれば、多感な年齢故の激しさとそこから生まれる衝突を表現できる。露わにした感情の波の大きさで言えば、菜月はフィーナに次ぐくらいのものを放出していたかもしれない。

 

表に出した感情の大きさが凄い、というのは、要するに、まだまだ菜月も不器用である、というシンプルな事実に結び付けられる。もちろん、我が強い、だとか、まっすぐに育ってきた、という表現を使ってもいい。どちらにせよ、菜月は、特に主人公に対して婉曲な手段を取ることができなかった。遠山のように揺さぶりをかけることができなかった、と言えば、言いたいことは伝わると思う。もっとも、遠山にせよ、潔いところは美点であって、これはやはりこの年頃の少年少女がまだ不器用で、男女の機微や駆け引きを理解できていないところに原因があるように思われる。そして、不器用であるが故に愚直にもがく、それが許されることこそ若さの特権なのだと、今なら分かる。

 

 

リースルート

 

まずその短さにびっくりした。当初はHシーン集の残り枠を参考に、まあ他のルートと同じくらいの長さはあるのかなあ、と思っていたのだが。

 

とはいえ、この短さも計算の内だろう。「野良猫」であるリースにとって、朝霧家は一時の住まいであることは論を待たない。リースと主人公は、長い生から見れば刹那的なその一瞬の内に、邂逅し、お互いを分かり合い、そして肌を重ねたのだ。その触れ合いが行き着く先がどこなのか、2人とも分かっていながら。

 

そう、主人公もそのことを分かっていた。分かっていた上で、あの日、空の上で、彼はリースに笑いかけたのだ。はっきり言うと、このルートの主人公が一番大人だ。時間というもの、生というもの、そして生の意義という問い、その3つと向き合い、自分の感情を受け入れた主人公は、間違いなく菜月ルートの彼とは別人だった。

 

こういう一瞬だけ心が確かに通じ合った、そんな経験や関係に憧れてしまうのは、私がロマンティストだからだろうか。リースルートは、ロストテクノロジーなどこの『けよりな』の物語の核心に迫る要素を提示する役割を担わされてはいたが、決してフィーナルート後半という物語の本筋への橋渡しに成り下がることなく、私の胸に確かな感慨を残していった。

 

 

夜明け前より瑠璃色な(フィーナルート後半)

 

実のところ、遺跡調査が云々という話が出たところで、この物語が向かう先は見えてしまっていた。後は、残された「主人公の父」と「フィーナの母」という伏線をどうまとめるか、それから、どの程度まで主人公とフィーナの2人を面倒ごとに巻き込むか、くらいしか予想の幅がなかった。

 

とはいえ、フィーナルート後半の序盤は、フィーナ以外のヒロインが各々のルートで見せた魅力を発揮していて、いよいよ大団円が近づいてきたな、という印象を抱かせてくれる。そう、物語としてこうなるよりない、という状態でも、私たちはちゃんと楽しむことができる。予定調和は、実はそれ自体に悪い意味が込められていない。

 

月に向かってからは、いよいよ結末に向かって一直線という雰囲気がプンプンしていた。というのも、月に向かうまでの段階で、カレンの見せ場も、リースの出番も終わってしまっていたからだ。設定の都合、朝霧家とその周辺のメンバーが月に集結できる見込みは薄い。こうなっては、フィーナが大演説をかます以外にまとめようがないのだ。

 

そういうわけなので、むしろ滝の如く一気に飲み干してしまったというのが実情だ。もちろん、フィーナはかわいかったし、結末にも納得している。止まらせることなく読ませ切るというのはなかなかできることでもない。それだけ、これまでの展開や緻密な描写の積み重ねが、(他に物語の動かしようがなかったとはいえ)最終盤に説得力を持たせていた、ということなのだと思う。

 

 

余談

 

結局、夜明け前より瑠璃色なものとはなんだったのだろうか。本編最後に示されるのは、月から見た地球という答えだ。実のところ、スフィア王国が月の表側にあるならば、月から満地球が見える時夜の地球から月は見えない。月は、ちょうど夜明け過ぎになってからその姿を見せ始める。そのことに気が付くと、この物語の中で、月と地球という表裏一体の存在にとっての「夜明け」とはなんなのか、という簡単な問いが浮かび上がる。

 

これから、月と地球は新しい関係を築いていくだろう。今はまだ、お互いにとって夜明け前に過ぎない。それでも、これから先、月は彼方の地球から目を離さないし、地球からも月の薄い光が見えるようになるに違いない。夜明け前の瑠璃色よりまだ深い神秘的な蒼は、月と地球の明日を予感させてくれる。そして、フィーナと達哉もまた、深遠で広大な未来に向かう、まだ深い瑠璃色の場所にいるのだと、これからの2人は今まで以上に幸せな生活を送るのだ。私たちにそんな確信を与えながら、物語は幕を下ろしていった。

 


 

結論を言うと、いや、いい作品だった。エロゲとして必要な要素が全部詰まっていたかのように錯覚させられる。もちろんそんなことはどんなエロゲにもできないんだけれど。大満足。