Mashiro Chronicle

長文をまとめる練習中 割となんでも書く雑食派

謎縛りABBA曲7選

映画版『MAMMA MIA! Here We Go Again』の日本での上映が始まって早ひと月弱。いわゆるジュークボックス・ミュージカルとしては破格の知名度を誇る前作の続編であり、新作も公開前から注目度が高かった。例によってスウェーデンの誇る世界的ポップグループ・ABBAの楽曲をふんだんに使った贅沢な仕上がりになっている。まだ触れていない人は、サウンドトラックだけでも是非。

 

さて、そんな時期にあって、筆者の中でABBA熱が再燃している。元々中学時代には浴びるほど聴いていたのだが、以降も折に触れて聴き返すことになった、ある意味因縁のグループでもある。70年代後半から80年代前半にかけてのポップスのスタンダード・ナンバーが揃っているベスト盤『GOLD』は、やはりオールタイム・ベストだ。いかにグループ解散後に発売されたベストとはいえ、一曲も外さないというのは凄まじいの一言に尽きる。「Dancing Queen」から「Waterloo」まで、ひと息も尽かせてくれない。

 

だが、ABBAの楽曲は「GOLD」に収録されたものだけ持ち出されるきらいがあることも確かだ。解散後に発売されたベスト盤は、40周年記念盤で一枚追加されて合計3枚、もちろん未収録楽曲もある。

 

というわけで、ここでは(何番煎じか分からないが)『GOLD』に収録されていない曲に絞って、何曲か紹介してみようと思う。筆者の個人的センスによるものなので、統一感は全くない(はず)。その点はご承知おきを。

 

あと、試聴コーナー作ろうと思ったけど、アフィリエイト云々がめんどくさかったのでパス。ごめんなさい。Vevoがサポートしてるものに関してはYouTubeリンク貼っておくので、それでお茶を濁した、ということで。

 


 

※草創期のアルバムである『RING RING』は流石に割愛。あのアルバムに触れる時は前史についてページを割く必要があり、片手間でできる作業ではない。

 

1.「Honey, Honey」from『WATERLOO』

 

...とか言いながら一曲目から映画版『MAMMA MIA!』(第一作)の冒頭にかかる曲を出してどうするんだ、といった感じである。というかこの企画『MAMMA MIA!』収録曲も除かないとなんの意味もないんじゃ。

「Waterloo」でユーロビジョン優勝を果たしたABBAが送り出したアルバムに収録されているのだが、この頃のABBAはまだ方向性を固めきっていないようにも感じられる。模索の時代、とでも言えばいいだろうか。サウンド的にもABBAっぽさというものはまだ完成しきっていない。とはいえ、キャッチ―なフレーズと覚えやすい歌詞は流石と言ったところか。

ABBAはコーラスに男性二人が参加することはあっても、メロディーラインを歌うことは稀なチームだった。それこそ、一般の人は「Does Your Mother Know」くらいしか思い浮かばないのではないか。とはいえ、初期の頃は、女声と男声でユニゾンを試みることも多かった。この曲は、部分部分で男声が入る、というつくりをしていて、ABBAの中では珍しい曲だ。

後世映画版『MAMMA MIA!』(第一作)でアレンジされた際には、男声部分がインストゥルメンタルになった。アマンダ・サイフリッド(が本当に歌っているかどうかは分からないがクレジット上はアマンダ)の瑞々しい声に、しっかりと当世風に仕込み直されたサウンドが相まって、同サウンドトラックのトップバッターを飾るに相応しい仕上がりになっている。こちらもどうぞ。

 

 

2.「I Do, I Do, I Do, I Do, I Do」from『ABBA

 

Abba - I Do, I Do, I Do, I Do, I Do - YouTube

 

これもやっぱり映画版『MAMMA MIA!』(第一作)のOSTに入ってるんだよなあ、と愚痴ってみる。

ABBAの曲は、歌詞でみるとだいたい3種類ある。恋に浮かれてアタックをかけている曲と、失恋/離婚してどうしよう、という曲、それに、大失敗した知人を慰めるナンバー。ちなみにこの分類に当てはまらないその他の曲は大抵なぜそんな歌詞の曲を作ろうと思ったのかさっぱり分からない。

この曲は最初のパターン。タイトルの段階でなかなかインパクトがあるのだが、実際にメロディに乗せてみるとこれがもう威力抜群。タイトルそのままのフレーズが頭からこびりついて離れない。

ABBAは、「Dancing Queen」のイメージが強いからだろうか、ディスコミュージックの完成形と看做されることも多い。確かに(当時の)シンセサイザーを使ったサウンドはそれに近いものを想起させてくれるのだが、実際のところはこうした親しみやすいフレーズこそこのグループの底力なのだと思う。尤も、作曲的に相当工夫されたものも多いし、最晩期の曲はそうでないことも多いのだけれど(私見を述べれば、最後のアルバム『THE VISITORS』の影が薄いのは、これが原因である気もする)。

 

 

※続く2枚のアルバム『ARRIVAL』と『THE ALBUM』に入っている曲は、どれもこれも有名で触れられないので、割愛。

 

 

3.「Angeleyes」from『VOULEZ-VOUS』

 

今回の映画『MAMMA MIA! Here We Go Again』のOSTについて文句というか言いがかりというか、疑問に思うところが一点だけある。日本版iTunes Storeでのこの曲の表記が「Angel Eyes」になっているのである。オリジナルは「Angeleyes」とスペースが無かったはず。なぜこうなってしまったのか謎。

一曲たりとも触れなかった2枚のアルバムで、ABBAは世界的な知名度を得るに至り、その中で自分たちのサウンドというものを確立していく。かの「Dancing Queen」が収録されていたのは『ARRIVAL』である。

「Angeleyes」は、おそらくそうしたABBA特有のコーラスで遊んだかのようなサウンドが最も前面に出てきている曲の一つだろう。作曲的には、積み重ねられた女声のコーラスが映えるサビ部分と、男声も支えるサビ前のパートの、シームレスなようで引っかかりを残した繋ぎと、さらにはそれらと間奏との間で行われるギアチェンジが見事だ。サビの終わりが特徴的なので、ミュージカルや映画に持ち込む際はここの処理に相当難儀したことだろう。実際、映画版のOSTを聴いてみると、かなりアレンジが加えられていて、原形がどうなっていたのか分かりづらくすらある。

昔はこの曲の引っかかりがどうにも気になって、聴きこんでみたいけど触れない、といった、複雑な姿勢で接していた。今聴き返してみると、ノリにノっていたABBAの、ある意味では真骨頂とも言える曲なのではないか、と感じられた。

 

 

4.「Summer Night City」from『VOULEZ-VOUS +6』

 

Abba - Summer Night City - YouTube

 

ABBAは、ベスト盤を除くオリジナルのアルバムに関して、リマスターを行った際に幾つか楽曲を追加している。+6というのは、リマスター版で6曲追加された、という意味だ。

この楽曲「Summer Night City」は、元々シングルでのみ発売されていたものだ。後にリマスター版で収録された他、『MORE GOLD』にも盛り込まれた。1978年発売のシングルなので、本来であれば1979年発売のアルバム『VOULEZ-VOUS』オリジナル版の収録曲より先に紹介すべきだが、ここではリマスター版で追加されたという事実を重視して「Angeleyes」より後に項目を立てている。

この曲は、ABBAファン以外からも人気のある楽曲だ。実際、『GOLD』に続くベスト、『MORE GOLD』では一曲目に抜擢されている(ちなみに、『GOLD』の一曲目はもちろん「Dancing Queen」)。

しかし、ABBAファンの間では、この曲は別の意味で有名だ。というのも、作編曲を担当している男性二人が、当初からこの曲についてずっとネガティブなコメントばかり残しているのだ。

実際、この時期のABBAの曲の中で、「Summer Night City」は浮いている。いや、ABBA全体を通してみても、なかなかこれに類似した曲は見当たらないだろう。だからこそ、ABBAファン以外の一般層からもウケがいい、とも言えるのだが。雰囲気的には夜の世界を題材にしていて、似たような曲はある。ビートをそれなりに押し出し、男声やアルトボイスを積極的にメロディへ絡めていくことで、サビの落ち着いた女声高音がかえって際立ち、健全さがよく語られるABBAの文脈にあって、アダルティックな雰囲気を醸し出すことに成功している。

彼ら自身の評価にかかわらず、この曲が音楽的にも売上的にもそれなりの成功を収めていることは確かだ。この時期のABBAは何をやっても上手くいくまさにフィーバー状態だったということの証左である、とも言えるかもしれない。

 

 

5.「Happy New Year」from『SUPER TROUPER』

 

Abba - Happy New Year - YouTube

 

『MORE GOLD』どころか40周年記念盤のベスト3枚目にも収録されていないので、聴く場合は元のアルバムを当たるよりない。なぜか日本のVevoYouTubeで公開しているが。

楽曲的に云々、というか、歌詞がなかなか面白い。新年おめでと~! みたいな雰囲気は一切なく、むしろ、年の変わり目にはしゃぎ切った、その後に残る静寂と、静謐な時間の中にある私たちが語られる。

落ち着いたメロディと調選びは、元よりABBAの得意とするところだ。ただ、この曲は「Chiquitita」や「Fernando」にあるような、明るく振る舞うパートはなく、ひたすらに静寂を紡ぎ続ける。混じり気の一切ない、来たる新年への私たちの静かな祈りが、そのまま曲になってしまったかのような、そんな雰囲気すらある。

 

 

6.「Under Attack」from『THE VISITORS +6』

 

Abba - Under Attack - YouTube

 

これもリマスター版でアルバムに加わった曲。『GOLD』以前のベスト盤などにも収録されている他、『MORE GOLD』にもある。

この『THE VISITORS』はABBAのスタジオ・アルバムとしては最後のものなのだが、如何せん収録曲の影が薄い。本当に薄い。世間一般の人にこのアルバムの名前を出しても、あるいは個々の楽曲について尋ねてみても、ほとんど反応が返ってこない。せいぜい「One of Us」を知っているかどうかだ。

確かに、上で少し触れたが、ABBAの持つキャッチ―な部分はこの頃になると影を潜めるようになっている。その辺りが、このアルバムの世間における浸透度に影響を与えているのかもしれない。

しかし、このABBA最後のアルバムは、むしろ彼らが新しい方向を示そうとした作品であり、個人的にはもっと評価されてよいと考えている。

ABBAの晩期はメンバー間の不和と離婚により、グループ内部でもぎくしゃくしたものが蔓延っていた。その中にあって、離婚を真正面から捉えた「When All Is Said and Done」などは、芯の通ったアルトボイスによって新たな人生への力強い踏み込みを感じさせてくれる名曲だ(余談だが、離婚を題材にしていたはずのこの曲は、映画版『MAMMA MIA!』(第一作)では逆に結婚に向けた一曲へと模様替えされている。男性陣二人が何を思ってそうしたのか、少し気になるところではある)。

同時期に録音された「Under Attack」は、踊り出してしまいそうなビートでこそないが、ABBAらしいサウンドを引き継ぎながら、新たな音の方向性を提示しようとしていて、まさに最晩期ABBAらしい一曲だ。サビ部分の、重層を為す女声コーラスが耳に実に心地よい。サビに至るまでの起伏の少ないバックサウンドや、ドラムではなくむしろ抑えた調子の一本ボーカルによってリードされる独特のリズムが、完成度の高い、よく加工されたメロディアスなサビ部分、特にそのコーラスのインパクトを強めている。メロディラインをギリギリ打ち消さない程度まで存在感を放ってくるコーラスに何回か耳と頭を持っていかれそうになったことがある。必聴。

 

 

7.「I Am the City」from『MORE GOLD』

 

最後に謎の一曲をば。

ABBAの最晩年に収録された、しかし発表されることがなかった一曲が「I Am the City」だ。結局、グループ解散後しばらく経った後に発売されたベスト盤『MORE GOLD』に収録され、私たちの耳に届けられた。

一言で言えば、謎の楽曲だ。サウンド的には、「Under Attack」にも通じる、ABBA最晩期のものとほぼ同種と判断してよいのだが、問題はその歌詞。本当に「I Am the City」なのである。そうとしか表現しようがない。比喩として何か語りたかったのか、それとも別の思惑があったのか、それすらも判断できない、

とはいえ、音楽的には円熟の域に達したABBAの佳曲と呼んで差し支えない仕上がりになっている。これだけの完成度の楽曲をお蔵入りさせていたのだから、ABBA恐るべしと言うほかない。

 


 

元々は『THE VISITORS』全曲紹介でもやるか~、と思っていたのだが、流石にそれはどうだろうと思い直してこの企画を通してみたら、なんとまあ普通の出来になってしまった。まあ、ABBAに関心のある人がちょろりと聞いて「これもABBAなんだ~」と思ってくれれば御の字、ということで。

 

最後に、超個人的ABBAルネサンスの中で、そういえばこんなアルバムもあったなあ、と思い出したので、一応紹介。

2012年に発売された、ABBAのジャズアレンジ集がこちら。ABBAは版権管理やクオリティ管理に厳しいことで有名で、アレンジアルバムやトリビュートアルバムの数が少ないのだが、これは貴重なABBAオンリーのインストゥルメンタルアレンジアルバム(ボーカルなし)。なんとドラムがSteve Gaddという。個人的にオススメの一枚。気になる人はどうぞ。

 

Same Tree Different Fruit - ABBA (アバ-ジャズ)

Same Tree Different Fruit - ABBA (アバ-ジャズ)

  • アンデッシュ・ヴィーク, スティーヴ・ガット & スヴァンテ・ヘンリソン
  • ジャズ
  • ¥2400

 

(カタカナで楽曲表記されると、どうにもしまらない印象になるが、それはご愛敬ということで)

 

(了)